世界保健機関(WHO)の協力を得て、私は1985年から20余年かけて、世界中の食と健康長寿の関係を調査してきました。そこで注目したのは、世界の長寿地域の多くで、かんぶつが作られ活用されていたことです。たとえば新疆ウイグル自治区に住むウイグル族は、ご飯を主食にしていますが、野菜の少ない冬場には、乾燥させた果物を混ぜて食べます。また、さまざまなナッツ類を乾燥し、保存食として一年中活用しています。ドライフルーツとナッツは、西の長寿食文化を代表するかんぶつです。
日本の伝統的な食文化である農産物や海藻のかんぶつは、現代人に不足しがちな食物繊維やミネラルのよい供給源となります。さらに日本の3大かんぶつである、こんぶ、かつお節、干ししいたけを、だしとして使えば、薄味でも、油脂のコクや砂糖の甘みの助けがなくても、おいしく食べることができるというメリットがあります。そうした天然のうまみや香りに対する感受性を、小さいうちから舌と脳に記憶させておくことは、一生の健康管理に役立ちます。
日本は長寿国になりました。しかし日本人は、効率よくエネルギーを蓄積する「倹約遺伝子」を持つため、エネルギーの過剰な欧米型の食事を毎日食べていると、生活習慣病になりやすい体質なのです。元気で長生きができる長寿国日本を維持していくためには、日本や東洋の伝統的なかんぶつの食文化を見直し、食生活にうまくとり入れて活用することが大切です。このたび誕生した「かんぶつマエストロ」が、社会の中でその役割を担うことを、そして一人でも多くの「かんぶつマエストロ」が活躍されることを大いに期待しています。
日本かんぶつ協会会長
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